アメリカ、デリバティブ規制
アメリカ政府が、米国発金融危機の大きな一因となったデリバティブ(金融派生商品)の規制強化案を示し、議会に関連法改正を要請した。米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が昨年9月に陥った経営危機の引き金となったクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)など当局から野放しにされた複雑な金融取引の透明性を高めて、システミックリスク(連鎖破綻の危険)を防ぐのが狙い。オバマ米政権による金融規制改革の具体的な第一歩となる。
ガイトナー財務長官が13日に規制案を発表。デリバティブの大半を従来の金融機関同士の相対取引ではなく、金融当局が監督する中央清算機関(クリアリングハウス)を通じて実施し、金融機関やヘッジファンドなどのトレーダーに取引内容の報告を義務づける。商品先物取引委員会(CFTC)や証券取引委員会(SEC)に、不正取引の取り締まりや詳細な調査の権限を与える。
金融工学を駆使して株や債券、為替、商品先物などの価格変動リスクを回避するデリバティブは1990年代以降急成長した。ウォール街の圧力で当時のクリントン政権やグリーンスパン議長下の連邦準備制度理事会(FRB)は、規制導入に消極的で、野放図な状態が続いてきた。
取引規模は現在680兆ドルに上り、特に証券化商品の焦げ付きや企業破綻による損失を保証するCDSは近年急拡大。中心プレーヤーだったAIGや証券大手リーマンブラザーズは金融市場の大混乱で膨らんだ損失をカバーし切れず、リーマンは破綻、AIGは経営危機に陥り、救済を受ける羽目となった。
このためガイトナー長官は「現下の金融危機は主に市場の規制の遅れによって引き起こされた」と述べ、規制導入が金融危機の再発防止に不可欠と強調。議会も協力姿勢を示した。
規制案で、不測の事態による損失拡大に備えて、デリバティブを大規模に手がける金融機関には一定の資本を積むことを義務づけたたのは、「リーマンショック」の反省によるものだ。ただし、標準化されていない特注のデリバティブ商品には従来通り相対取引を認めるなど、「規制の穴を埋めるにはなお不十分」という指摘もある。
一方、4月にロンドンで開催された主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)では、デリバティブの国際的な規制強化の方針が確認されており、今後海外当局の取り組みもカギとなる。
